Simtrecs Pro Pedal GT

製品概要

Simtrecs Pro Pedal GT は sim racing 向けのハイエンドペダル1で,以下の特徴がある.

  • 3ペダルセットで€995
  • ベースプレートは別売りで€140(2サイズ)
    • Narrow BasePlate(375mm)
    • Wide BasePlate(415mm)
  • アクセル・クラッチ
    • センサーは potentiometer(可変抵抗)
    • ともにバネ+固定油圧ダンパーの仕様
  • ブレーキ
    • センサーは 200kg Load Cell
    • バネと積層ゴムの2段階の抵抗と可変油圧ダンパーを組み合わせた仕様
  • Heusinkveld の Sim Pedals Ultimate(+)等と似たような構造
    • 価格帯も近い(Ultimate+ は €1,098.35)
    • Heusinkveld の方はアクセル・クラッチも Load Cell である点が異なる
  • 各パーツを削り出しで作っていて見た目がかっこいい2
    • 他の製品はプレートの組み合わせのものが多く,個人的に好みでなかった

公式サイト: https://www.simtrecs.com/index.php

お馴染み Sim Racing Garage のレビュー: https://www.youtube.com/watch?v=aZG8S-OX8pY

メーカー(simtrecs)について

ハンガリー・ブダペストのメーカー.

公式サイトに家族写真があるので,“メーカー"と言うよりも"家族経営の工房"に近い規模だと思われる.

元々はレース活動をしていて,ここ20年はRCカーの製造を行っていた模様. sim racing デバイスの販売は2020年末発売の Pro Pedal GT が最初の(2022年2月現在唯一の)製品. 実車→RC→sim racing と各々の代が好きなものを作っているのかもしれない.

製品のレビュー

購入理由

以前使っていたペダルは “Fanatec CSL Elite Pedals LC” だったが,とくに以下の2点に不満があった.

  • ブレーキの最大値(公称は60kgだが…)を踏み切ってしまう事がある
    • (ブレーキングのイニシャルが安定しない)
  • ブレーキの入力が小さい(0%〜50%)範囲でコントロールしにくい
    • (とくにトレイルブレーキングっぽいことをしようとすると難しい)

CSL Elite LC は悪くないペダルで,実際めちゃくちゃ速い選手3が使っている(た?)らしい. が,如何せん自分の足ではコントロールしきれない部分が多く,走りのボトルネックになっていたためアップグレードを検討した.

アップグレード先を以下の要件で探した.

  • ブレーキ
    • センサーは大荷重 Load Cell 必須
    • 本格的な油圧ブレーキまでは求めない
      • 積層ゴムを使用する製品で必要十分
      • 油圧ダンパは興味ある
    • 調節可能な部分が多いと嬉しい
  • アクセル
    • 今よりも可動域・精度が向上したら嬉しい
    • 調節可能な部分が多いと嬉しい
    • potentiometer で十分
  • クラッチ
    • 2ペダルにして予算をケチるほどではない
    • potentiometer で十分
  • ベースプレート
    • おそらく必須(なければ他で入手)
  • 予算
    • 最大15万前後を想定しているが,予算制限は厳しくない
  • その他
    • sim racing に特化した製品は避けたい(Heusinkveld Sim Pedals Sprint 等)
    • が,実車に忠実でなくても良い
    • 見た目がかっこいい(←これ重要)

Heusinkveld ultimate 等も検討したが,見た目があまりにもカッコよかったので Simtrecs Pro Pedal GT を購入した.

性能・品質

海外ですらレビューが少ない製品だったので心配だったが,結論から言うと非常に良い製品だった.

あくまでも iRating 2.0K ちょっとのドライバーの意見なため,ドライビング周りは信用に値しないかもしれないが,以下ProsとConsを挙げる.

Pros

  • かっこいい
    • 削り出しの各パーツが非常に良い
  • アクセル
    • センサーの精度が良く,狙ったアクセル開度ピッタリにできる
    • 可動域が広めで扱いやすい(狭くすることも可能)
    • バネの強さも使いやすい硬さにできる
  • ブレーキ
    • 最大値が非常に大きい(最大設定にすると使いきれないほど大きい)
    • 踏み始めからフルブレーキングまで Load Cell センサーの精度が非常に良い
    • ゴムの組み合わせが多様で好みの踏み加減を作る事ができる
  • クラッチ
    • 可動域が広めで扱いやすい(狭くすることも可能)
    • バネの強さも使いやすい硬さにできる
  • ベースプレート
    • 高さ等々の調整が可能
    • おそらく剛性も高い
  • ソフト
    • (この手の製品でイマイチになりがちな)設定ソフトの出来が良い
    • デバイス本体に設定を書き込めるので,常駐の必要がない
  • パッケージ
    • 必要な工具類がすべて入っていてかなり便利
    • 豪勢だがムダがなくコンパクトなパッケージ
  • 不良パーツ対応
    • 後述するように不良パーツが2つあったが,非常に丁寧で素早い対応だった(ASAPで交換パーツを送ってくれた)

Cons

  • アクセル
    • デフォルトでは少し重め
    • potentiometer なので劣化が心配
  • ブレーキ
    • (不良パーツ)Load Cell センサーーの外皮が少し裂けていた
    • (不良パーツ)油圧ダンパーが不良ロットだった
    • ペダルプレート上下位置の調節幅が小さい
  • クラッチ
    • クラッチを再現する機構の自由度が他社製品に比べて少ない
    • デフォルトではかなり重め(目一杯弱くしてちょうど良いくらい)
    • ペダルプレート上下位置の調節幅が小さい
    • potentiometer なので劣化が心配
    • potentiometer の端子が剥き出し
  • アクセルに付いているノブでブレーキの最大値を調整できる機能は便利だが…
    • ペダルまで手を伸ばさないと使えない機能なので結局使わない(DD を使っていると怖い)
    • ノブで調節すると微妙に値がずれるので(気になる場合は)再調整が必要
    • (ソフトの出来が良いので,)ノブを大きめに設定し,ソフト側の微調整で十分だった
  • ベースプレート
    • ベースプレートをもう少し高くできるようにして欲しかった(好みの問題)
    • Heusinkveld 等にあるような踵を当てる板があれば嬉しかった(好みの問題)
    • 取り付け用ボルトに汚れがあった(表面処理漏れかサビと油)
    • 取り付け用ボルトを舐めやすい(頭が低い and/or 材質の問題?)

不良パーツ対応

以下の不良パーツがあった.

  • [個体不良] Load Cell センサーケーブルのフェライトコア部分の外皮が裂けていた
  • [Batch6のロット不良] ブレーキ用油圧ダンパのピストンのサイズが適正ではない

Load Cell センサーは,「今すぐ交換しなくて良いが,問題が起きた時に交換して欲しい」と即座に交換用の Load Cell センサーを送って貰えた. ブレーキ用油圧ダンパは(不具合のある個体を優先で)Batch6 の購入者全員に交換用のダンパを送付する対応をしたらしい. 自分は不良個体ではないと思い込んで使っていたのだが,交換用のダンパーと交換する際に不良個体だった事が分かった.

不良パーツがあるのは良くないが,アフターサービスが非常に良かったので満足している. (工業製品なのである程度の不良個体は致し方ない部分もあるだろう.)

所感

Elite LC で困っていたブレーキのコントロールが非常にやりやすくなった点が非常に良かった. また,アクセルコントロールも改善され,足回りのストレスがほぼ皆無になったので100点満点の製品だと思う.

余談だが,日本人ユーザーを他にまったく見かない. 「sim racing に特化した製品は避けたくて,かといって油圧ブレーキまでは求めていない」という方には刺さる製品だと思う. 一応,購入時の話を後述したので,自分と同じような製品を求めている方は参考にして欲しい.

購入に関する諸々

個人輸入にあたって普通とは異なった点があったので,記しておく.

PreOrder

製造規模が大きくないからか,現状公式サイトでの PreOrder のみになっている.

1カ月に 1 Batchの単位で製造していて,PreOrder の順に発送している模様. (1 Batch での製造個数は不明)

今も同じかは不明だが,自分の場合は以下の流れだった

  1. 公式サイトで PreOrder を申し込み(2021/03/02)
  2. PreOrder の返信メールが届く(2021/03/11)
    • 割り当てられた Batch と完成予定時期を教えてもらえる(自分の場合は Batch6)
    • (ベースプレートを希望する場合は)プレートのサイズを聞かれる
    • 発送先の住所を聞かれる
  3. プレートサイズと住所を返信(2021/03/13)
    • ちなみにこの時に宅配便会社と送料の概算を聞いたら教えてくれた(2021/03/19)
  4. 割り当てられた Batch が完成するまで待つ
    • 製造状況は FaceBook で更新されているが,進捗状況のメール等は来なかった
  5. 割り当てられたロットが完成した旨のメールが来る(2021/07/26)
    • EC サイト経由での支払い情報の入力を求められる
    • 一週間以内に支払わないとキャンセルされる
  6. 後述するように WISE で支払い(2021/07/29)
    • 2021/07/28 に送金して 2021/07/29 に入金確認された
  7. ブダペストから発送(2021/07/30)
  8. 東京着(2021/08/02)

支払い方法

支払い方法はいくつか選択肢があったが,クレジットカードを使用するものは手数料が高めだったので[WISE](https://wise.com)を用いた Bank transfer(国際送金)で支払った. 支払い情報の入力欄から国際送金を選択して,表示された送金先に WISE 経由で送金する形になる. [口座番号の国際標準(IBAN)](https://ja.wikipedia.org/wiki/IBAN%E3%82%B3%E3%83%BC%E3%83%89)を使用出来たため,口座の指定等々は国を跨いでる割に非常に簡単だった.

WISE は手数料が安めだが(クレジットカードの為替手数料よりも安い?),詐欺にあったときは泣き寝入りするしかないので注意が必要.

配送

配送は FedEx で,日本までの送料は €86 だった.

土日を挟んで 2021/07/30(金)発送・2021/08/02(月)着と早く届いた.

関税・消費税

FedEx なので関税・消費税は後日届く請求書で支払う形だった.

自分の場合は消費税のみで9000円だった.

合計金額

ペダル本体とベースプレート(wide)を購入し,送料・税込で16万円弱だった.

ユーロ
送金額€1,149.004 ¥149,048
- ペダル本体€925.20
- プレート€137.80
- 送料€86.00
送金手数料¥1,021
消費税¥9,000
合計¥159,069

  1. 公式では Professional grade SimRacing Pedal と謳っている. ↩︎

  2. 個人の感想です. ↩︎

  3. 某バーチャルシムレーサー ↩︎

  4. 為替レートは2021/07/28の1€=¥129.72 ↩︎